アンサンブル

つの笛集団/夢の架け橋
CD(CRYSTON OVCC-00061)

1.イウェーゼン/夢の架け橋 
2.石井 由希子/「悠」より出陣、鎮魂
  (法螺貝と6本のホルンによる協演)
3.モーツァルト/ホルン五重奏曲変ホ長調 K407
       (木村傑作編)
4.バルトーク/ルーマニア民俗舞曲(真島俊夫編)
5.ビョーク/オーヴァチュア(アトキンソン編)
6.スーザ/ワシントン・ポスト(マルチネット編)
7.ガーシュウィン/ラプソディー・イン・ブルー
        (古田儀左衛門編)
8.ラヴェル/亡き王女のためのパヴァーヌ(近藤久敦編)
  つの笛集団
  日高 剛 (ホルン)(1、2、3、6&8)
    〃 (ワーグナーチューバ)(5)
  冨成 裕一(ホルン)(1、2、4&8)
  高野 哲夫(ホルン)(1〜3、5、6&8)
  野瀬 徹 (ホルン)(1、4&7)
   〃   (法螺貝)(2)
  樋口 哲生(ホルン)(1&5)
  大野 雄太(ホルン)(1、4、7&8)
  ジョナサン・ハミル(ホルン)(1、4&7)
  福川 伸陽(ホルン)(1、3、4&8)
  田場 英子(ホルン)(1、4、6〜8)
    〃 (ワーグナーチューバ)(5)
  丸山 勉 (ホルン)(3、7&8)
  西郷 雅則(法螺貝)(2)
    〃  (ホルン)(7)
  木村 淳(ホルン)(2〜8)
  澤  敦(ホルン)(2、7&8)
  久永 重明(ホルン:賛助)(2、3、6&8)
  録音2008年1月21&22日
    秩父ミューズパーク

 つの笛集団4枚目のアルバムです。今回のプログラムにはつの笛集団の委嘱作品、イウェーゼンの「夢の架け橋」が冒頭に収録されています。
「夢の架け橋」はエリック・イェーゼンがメトロポリタン美術館所蔵の4枚の日本画にインスピレーションを受けて作曲したものです。第1曲「白梅と月」第2曲「竹林の7人の賢人」、第3曲「美人画」、第4曲「天台山橋の獅子」という4つの小品で、いずれも美しい作品です。
 石井由希子の「悠」もつの笛集団の委嘱作品。2本の法螺貝(ほらがい)と6本のホルンのための作品です。曲は5つの楽章から構成され「仏心」「出陣」「悠」「惨」「鎮魂」の副題があります。この中から「出陣」と「鎮魂」の2つが演奏されています。この2曲では冒頭の法螺貝が朗々と鳴らされます。しかもこの法螺貝はホルン吹きが吹きますのでいわゆる法螺貝の吹き方ではなく、倍音を吹きまくるような楽器としての活用が面白いです。「出陣」はまるで狼の遠吠えのようです。ホルンパートは力強いです。「鎮魂」では法螺貝が嘆くような響きを出しています。
 モーツァルトのホルン五重奏曲を5本のホルンで吹くのは始めて聞きますが木村傑作が1980年に編曲したそうですから知る人ぞ知る名編曲といえましょう。このホルン五重奏はホルン・ソロとホルン四重奏の伴奏ということにはなりますが、実際に聞いてみますと5人のホルン・ソロが互いに吹き合って素晴らしいハーモニーになっています。原曲ではホルンのソロを弦楽器が受継ぐ部分をホルンが受け継ぐわけですから、誰がホルン・ソロを吹いているかまったくわからなくなります。この編曲はむしろヴァイオリン・パートを吹く方がソリスト以上に大変でしょう。なおソロは日高剛が吹いています。第2楽章にカデンツァを挿入しています。とにかく傑作、名演です。最も面白いモーツァルトになりました。
 バルトークの「ルーマニア民俗舞曲」は6曲のダンス小品によります。ヴァイオリン編曲もありますが、8本のホルンのための編曲は迫力も十分です。哀愁的な「ブチュムの踊り」、活動的な「ルーマニア風ポルカ」は絶品です。この演奏は何度聞いても感動です。
 ビョークの「オーヴァチュア(序曲)」は3分ほどの小品で4本のホルンと2本のワーグナーチューバによる演奏です。映画作品からの編曲です。
 スーザの「ワシントン・ポスト」は吹奏楽では必ず演奏するマーチですが、ホルン・パートは全くメロディーがありませんでした。そのマーチを5本のホルンのために編曲したこの作品はホルンにメロディを吹かせてくれますので嬉しい限りです。
 ガーシュウィンの「ラプソディー・イン・ブルー」はピアノのための作品でピアノとジャズバンド、ピアノとオーケストラのための編曲が一般的です。吹奏楽のための編曲もありますしトランペットとピアノ、ホルンとピアノもあります。この古田儀左衛門の編曲は8本のホルンのために編曲されています。ミュートを使って音色を使い分けています。このラプソディ・イン・ブルーは歴史に残るでしょう。ホルンのエキスパート達によるこの演奏はホルンを超えたオーケストラのようです。
 ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」はホルン吹きなら誰でも吹いてみたくなります。この編曲は10本のホルンで演奏されています。ミュートを使ったホルンがまるでオーボエのように聞こえて驚くところもあります。冒頭の主題はホルンの和音ならではの美しさがあります。中間部のハーモニーの素晴らしさはラヴェルの編曲では味わえないものです。ハープのアルペッジョをグリッサンドで吹いているのが素晴らしく、この編曲も傑作です。


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