テレマン/ホルン作品

ホルン協奏曲全集/RJ・ケリー&アレクサンドラ・クック(2013)
CD(CENTAUR CRC3380)

テレマン/ホルン協奏曲集(全曲)
1.3つのホルンのための協奏曲ニ長調TWV54:D2
2.2つのホルンのための協奏曲ニ長調TWV52:D1
3.2つのホルンのための協奏曲ニ長調TWV52:D2
4.ホルンと弦楽四重奏のための協奏曲
                   ニ長調TWV43:D8
5.ホルン協奏曲ニ長調TWV51:D8
6.2つのホルンのための協奏曲変ホ長調TWV52:Es1
7.2つのホルンと2つのヴァイオリンのための協奏曲
      変ホ長調TWV54:Es1(ターフェルムジーク)
8.2つのホルンのための協奏曲ヘ長調TWV52:F4
9.2つのホルンのための協奏曲ヘ長調TWV52:F3

  RJ・ケリー(ナチュラルホルン)(1〜9)
  アレクサンドラ・クック(ナチュラルホルン)
                 (1〜3&6〜9)
   ジョン・オーブリー(ナチュラルホルン)(1
   リチャード・ダン指揮パリサデス・バロック
    録音 2013年9月1&2日

  世界初のテレマンのホルン協奏曲全集です。テレマンのホルン協奏曲はソロの協奏曲と3本のホルンのための協奏曲が1曲ずつ知られていますが、2本のホルンのための協奏曲が6曲もあり、ニ長調、変ホ長調、ヘ長調が2曲ずつ、そしてホルンと弦楽四重奏の協奏曲(ホルン五重奏曲)まで収録されています。まだ他にも2本のホルンと管弦楽の組曲が複数ありますので多作家だったテレマンの作品が聴けるようになったことは嬉しいことです。なお、この録音では通奏低音にテオルボが使われていることも見逃せないです。リュートよりも大きいだけに重みのある音が響きます。
  3つのホルンのための協奏曲ニ長調TWV54:D2は古くから知られ、作品名辞典にも記載されていました。ブヤノフスキーが初めて録音したようです。
  2つのホルンのための協奏曲ニ長調は2曲あります。ここに2曲の録音があることで他の録音の照合が可能になりました。RJ・ケリーとアレクサンドラ・クックの素晴らしいアンサンブルが聴かれます。ナチュラルホルンを自在に吹きこなす2人の技に聞き惚れてしまいそうです。
  ホルンと弦楽四重奏のための協奏曲ニ長調TWV43:D8は原題が「ホルンを伴う四重奏協奏曲」となっています。この演奏には通奏低音のテオルボが加わります。宮廷音楽の雅の世界が広がります。なお、この作品は世界初録音と思われますが、テレマンの協奏曲としても12分を超える大きな作品です。ケリーの演奏はまるでバルブが付いたホルンのように滑らかな演奏です。
  ホルン協奏曲ニ長調TWV51:D8はテレマンのホルン協奏曲として最も有名な作品です。たくさんの録音がありますが、ナチュラルホルンによる録音はこれが初めてです。ケリーの滑らかな演奏には脱帽です。第3楽章の速いフレーズも見事に演奏しています。トリルや装飾音など実に素晴らしい。
  2つのホルンのための協奏曲変ホ長調TWV52:Es1は有名な「ターフェルムジーク第3集」に含まれる作品とは別の作品で、これが初録音です。初めて聴く作品でテレマンという作曲家の才能の豊かさを感じます。「アレグロ」「ラルゴ」「ヴィヴァーチェ」の3つの楽章で構成され6分ほどの作品です。「ラルゴ」ではホルンはお休みです。
  2つのホルンと2つのヴァイオリンのための協奏曲変ホ長調TWV54:Es1がターフェルムジーク第3集に含まれる作品です。聴きなれた作品を聴くとほっとします。ケリーらの演奏はリップトリルを巧みに使った見事な演奏です。第3楽章「グラーヴェ」ではテオルボの優雅な響きが聴かれます。第4楽章「ヴィヴァーチェ」の華やかな演奏は聞きものです。
  2つのホルンのための協奏曲ヘ長調が2曲録音されるのは初めてです。シュテファン・ドールらが1曲のみ録音していました。ヘ長調TWV52:F4は「ラルゴ」で始まり「アレグロ」になってから2本のホルンが華やかに演奏します。2本のホルンが3度の和音を奏でるのはきれいなものです。やがて細かいフレーズを演奏するところは難しそうです。第2楽章「ラルゴ」は弦楽のみ、第3楽章「ヴィヴァーチェ」はヴィヴァルディの協奏曲を思わせるホルンの響きがきれいです。
  2つのホルンのための協奏曲ヘ長調TWV52:F3は第1楽章冒頭の「ラルゴ」からホルンのきれいな和音が響きます。「アレグロ」に入ると狩のホルンの響きが華やかに流れます。第2楽章「シチリアーノ」では2本のホルンが優雅な主題を演奏します。第3楽章「ヴィヴァーチェ」はあきらかにヴィヴァルディを意識したかのようなホルンの響きでイタリアの音楽の影響が見られます。
  それにしても画期的なアルバムです。これからも滅多に出てこないと思われる傑作で名曲、名演奏、名録音が揃ったアルバムといえます。テレマンは4000曲といわれる膨大な作品があり全曲出版も今世紀中は無理といわれるほどですから、まだまだ隠れた作品がありそうです。


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