R・シュトラウス/ホルン協奏曲

1&2番/千葉  馨(1965&69)
CD(NHKCD KKC-2122)

N響/伝説の録音集
1.モーツァルト/フルート協奏曲第2番ニ長調K314
2.尾高尚忠/フルート協奏曲Op30b
3.R・シュトラウス/ホルン協奏曲第2番変ホ長調
4.   〃    /ホルン協奏曲第1番変ホ長調Op11

  吉田 雅夫(フルート)(1&2)
  千葉  馨(ホルン)(3&4)
  ジャン・マルティノン指揮(1)
  外山 雄三指揮(2)
  岩城 宏之指揮(3)
  ロヴロ・フォン・マタチッチ指揮(4)
  NHK交響楽団(1〜4)
  録音 1967年4月15日(1)東京文化会館
      1961年11月30日(2)杉並公会堂
      1965年3月26日(3)東京文化会館
      1969年5月27日(4)東京文化会館
               (ライヴ録音)

 N響の名物ソリスト、吉田雅夫、千葉馨の両巨匠による伝説の録音復活です。
 モーツァルトのフルート協奏曲第2番はジャン・マルティノンの指揮でした。吉田雅夫のフルートは透明感のある響きで素晴らしいモーツァルトを奏でています。
 尾高尚忠はN響の指揮者でもありました。フルート協奏曲は最初室内オーケストラ版で作曲され1948年に森正のフルートで初演されました。間もなく大オーケストラのために編曲した版に改訂したのですが、未完に終わり、最後の部分を林光が完成させて、吉田雅夫が1951年に初演したという経緯があります。このフルート協奏曲は第1楽章の劇的な主題で始まる冒頭から素晴らしい演奏で、そしてまた魅力的な作品です。第2楽章はハープのアルペッジョにのってフルートの歌が流れます。この楽章も技巧的な部分が多いです。第3楽章は弦のピツィカートにのって技巧的なフルートが歌います。日本のフルート協奏曲の傑作です。そしてこの吉田雅夫のフルートはまさに感動の名演奏です。
 リヒャルト・シュトラウスのホルン協奏曲第2番は首席ホルン奏者の千葉馨による演奏で、岩城宏之の指揮です。この演奏はまだ日本のホルン奏者ではほとんど演奏会では吹いていない頃のものでした。千葉馨のホルンは独特の響きがあります。この演奏で驚くのは第1楽章冒頭からのソロでハイE♭(実音)を出すときにグリッサンドをかけていたことです。ここで千葉先生劇的な演奏をしていました。第1楽章は自由自在に吹いていて、モーツァルトとは違う力強さを感じます。第2楽章の甘い響きのホルンはロマンスのようです。第3楽章のアレグロ・モルトは師デニス・ブレイン直伝の演奏ともいえるもので軽快で鮮やかなホルン、そして時に軽いビヴラートのかかる素晴らしい演奏です。この第3楽章はブレインを超えているのではないでしょうか。若さあふれる千葉先生の演奏は絶賛します。
 リヒャルト・シュトラウスのホルン協奏曲第1番は名誉指揮者のマタチッチの指揮でした。この1番は貴重な録音で幻のライヴ録音といってよいものでした。第1楽章冒頭ではティンパニのトリルの最後に一打があります。その勢いのある演奏は2番ともまた異なる魅力があります。この演奏はのびやかなホルンが聴かれます。丁度モーツァルトのホルン協奏曲を録音したころで絶頂期の演奏でした。マタチッチの指揮も盛り上がりがあってこれも素晴らしい。第2楽章のホルンはきれいなカンタービレです。さすがに歌がうまいです。第3楽章のロンドはゆったりと初めてテンポアップするマタチッチの指揮に注目です。千葉先生のホルンはライヴだけにやや危ないところはありますが流麗そのものです。まだこの作品のレコード録音が少ない時代の演奏ですが、今聴いてみるとこの楽章はブレインの影響を受けていることが伺えます。デニス・ブレインの弟子だったことを思わせる演奏です。後半のカデンツァ部分からコーダの力強い演奏は素晴らしいものです。最後に少しテンポを落とす演出は感動です。録音の復活を感謝します。 


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