ブラームス/ホルン三重奏曲

ロブ・ファン・デ・ラール(2016)
CD(Challenge Classics CC72745)

1.ブラームス/ホルン三重奏曲変ホ長調Op40
2.シューマン/アダージョとアレグロ Op70
3.シューベルト/流れの上で D943
4.ピルス/ソナタ形式による3つの小品

  ロブ・ファン・デ・ラール(ホルン)
  トーマス・ベイヤー(ピアノ)
  マシュー・ファン・ベーレン(ヴァイオリン)(1)
  カリン・ストローボス(メゾ・ソプラノ)(3)
  録音2016年6月4〜12日

 ロブ・ファン・デ・ラール(1987〜)はオランダのホルン奏者、ヘルマン・ユーリセンやヴォルフガング・ヴラダルに師事しています。2008〜13年にハーグ・フィルの団員、2016年からはアーネム・フィルとザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団の首席ホルン奏者に就任しています。
 ブラームスのホルン三重奏曲はロブ・ファン・デ・ラールの吹くホルンがふくよかな響きでホルンの音の美しさを改めて感じます。振動する唇がホルン向きだったのでしょう。第1楽章では哀愁的な主題の表現が素晴らしいものです。第2楽章のスケルツォでは力強く音を割って強奏するところはタックウェルのようです。そのテクニックは完成されたものです。第3楽章のアダージョ・メストは表現力の豊かさがあります。ロングトーンの響きと音色の安定感が素晴らしいものです。第4楽章:アレグロ・コン・ブリオでは快活なホルンが響き渡ります。ピアノとヴァイオリンとの相性もよくて息の合う演奏は新たな名演誕生と言ってよいでしょう。
 シューマンのアダージョとアレグロはホルンの定番曲です。アダージョの歌い方が絶妙でスラー、レガートの滑らかなこと低音の安定感などいうことありません。アレグロの優雅で力強い演奏も見事なものです。中間部の転調部分の響きも美しいです。
 シューベルトの「流れの上で」はホルン・オブリガード付の歌曲ですが声楽の歌よりもホルンの歌が難しい作品です。ラールのホルンは時に軽いビヴラートを入れた美しい歌を歌います。ストローボスの歌が負けそうなほどのホルンの歌に感服です。
 カール・ピルスのカール・ピルスの「ソナタ形式の3つの小品」は3つの楽章から構成されています。小品とはいっても全曲25分を超える大曲です。第1曲「シンフォニア」、第2曲「間奏曲」、第3曲「ロンド・アラ・カッチャ」となっています。ラールのホルンのテクニックを発揮する作品として申し分のないものです。第2曲の力強さと安定感が聴きどころです。第3曲は「狩りのロンド」ともいえる快活な曲です。この3つの小品はもはやピアノ伴奏のコンチェルトといってよい大作です。この作品の数少ない録音に名演奏が加わりました。
 このアルバムは古典から現代まで多彩なプログラムで、2つの大曲にはさまれた2つの名曲もまた素晴らしい演奏です。ホルンのアルバムにまた良いものが生まれました。絶賛したいです。


トップへ
戻る
前へ
次へ




inserted by FC2 system